可愛い子は好きですか?
____もっちろーん!
吐息遁走曲
無精ひげを一撫ですると、当年とって三十四歳は牧場の端で馬に乗っている馬超を見ていた。
「…可愛いなあ」
危ない。
周りをたむろしていた一般兵卒がざーっとその言葉で退く。
それに気付かずにはじっと馬超を見るとはあ、とため息をついた。
「なーんであんなに可愛いのかねぇ」
さながらため息は桃色だ。
ごろりと草原に横になるとはぼんやりと空を見上げた。サボってていいんだろうか。
「あー、将軍!またそんなところでさぼって。丞相にしかられますよ?」
「伯約か。良いじゃないか少しくらい。たまには労わってくれよ」
「いつもサボってるのは何処のどなたですか?もう」
書簡を手渡しながら姜維はぶつぶつと文句を言った。
のサボりはどうも常習で有るらしい。人好きのする笑みを浮かべるとは書簡を受け取った。
「しかし、馬将軍も本当に馬が好きなんですね。連日ではないですか?」
「うん。多分毎日だと思うなー」
「で、ここで将軍がサボるのも毎日、と」
「うっ」
「しかも何ですっけ、『可愛い』とかなんとかぶつぶつ呟いてるって聞きましたよ。兵卒の精神衛生上良くないんでやめでください」
「いやだってさー、ほら、可愛いものには可愛いって言いたいじゃないか」
「誰に?」
「伯約も可愛いぞ」
真顔で言うとは上半身を起こして馬超を見た。
馬から降りてこちらにやってこようとしている。
「将軍、筋金入りの衆道の人だと思われますよ、その分だと…」
「何言ってるんだよ!俺は二喬も好きだぞ!」
「年下趣味なんですね、要は」
呆れたようにため息をつくと、姜維は近寄ってきた馬超に挨拶をした。
「ああ、伯約か。どうした?」
「何、可愛い顔を見せてもらってただけだ」
「なっ」
「う、嘘ですよ馬将軍!書簡を渡してただけですって。はい、これは馬将軍に。丞相からです」
「全く。殿、冗談は大概にしてくれ。先だって俺のことを可愛いだの何だのとからかって」
「からかってなんかいないけどな」
にっと子供のような笑顔を浮かべるとは立ち上がり、草を払うと歩き去っていった。
「…おい伯約。一体どういうことなんだ?あれは」
「さあ。年下趣味ですよ、単なる」
「…へぇ」
どこか含みの有る顔でそう呟くと馬超は姜維から書簡を受け取り、礼を言う。
「で、実際に手を出したりは?」
「してないんじゃないですか?あ、でも呉の陸遜殿とは文通仲間みたいですけど」
「何っ!」
「ま、でも多分あれはそういうんじゃないんでしょうけど」
「陸遜殿か…油断ならないな」
「?」
ぎりっと歯を噛締めると馬超はの去った方角を見ていた。
自分の私室に戻るとは机の上に置いてあった別の書簡を開いた。
差出人は、先ほど姜維と馬超の話に出てきた陸遜である。
「何々、『男は」
『男は可愛いのが良いというわけではありませんよ!
無精ひげと整った筋肉、野暮ったさ、それもまた魅力なのではないでしょうか?
女性にしてもそうです。可愛さだけではなく、しとやかさ、賢さ、それもまた大事でしょう。
そうそう、話は変わりますが五日後にそちらに周瑜殿と共に行くことになりました。
貴方に会えることを楽しみにしておりますね。それでは。 』
一体何の話だ。
読み終わるとふぃーっとがため息をついた。疲れている。
「でも伯言の好みがおっさんとはな…あれか、呂蒙殿とか?確かに条件には当てはまるよなー。甘寧殿とかの方が可愛いと思うんだけどねぇ」
前回は馬超の可愛さ、姜維の可愛さ、そして趙雲の可愛さについてそれとなく書き綴ったのである。
そんなものを手紙にあっさりと書く辺りが恐ろしい。陸遜も受け取って愕いたことだろう。
だがそれに併せておっさんについて書き綴る辺りが文通仲間として見合っているのかもしれない。
しかし、陸遜が書いているおっさん像にはもまた、当てはまるのだということをはすっかり頭の中から抜け落としていた。
「甘寧殿は今回来ないのかなー。戦場以外で見てみたいよ、全く」
馬超が良かったんじゃなかったのか。
ここまで来ると節操がないとしか言いようが無い。
「ま、でも伯言も一応性格はアレだけど可愛いから目の保養になるよなー。周瑜殿は綺麗だし。うんうん」
満足げに頷くとは筆を取って返事を書き始めた。
『おっさんになるとおっさんの良さはわからなくなるんだよなー。
まあでも女性に関してはそう言えると思う。甄姫殿とか月英殿とかも美しいし。
後は会った後で。楽しみにしてるぞ?
お元気で。 』
あっさり五日後。予告したとおり、視察も兼ねて陸遜と周瑜が蜀の国にやってきた。
周瑜と諸葛亮が談義に入ると、暇そうにしていた陸遜は廊下を歩いていたを見つけると思い切り飛びついた。
「殿、お久しぶりです!」
「おお、伯言。随分見ないうちに少し背が伸びたな」
「それもこれも愛ゆえですよ」
「愛?ふーん」
ニコニコとを抱きしめる陸遜には目を白黒させながらも、確かに呂蒙殿は陸遜よりも背が高いからなあと妙な納得をしていた。
抱きしめられていることに大して異存は無いらしく黙ってその頭を撫でている。
「そうそう、私に会わないうちに誰かと付き合ったりとかしました?」
「いや、それがさー。可愛い子は多いんだけどどうにも手を出せなくって」
「へー?」
面白く無さそうに陸遜は相槌を打つ。
と、廊下の向こう側から馬超が鍛錬を終えてこちらに向かって歩いてくると、に向かって挨拶をした。
「孟起か。鍛錬お疲れさん」
「…そちらの方は?」
に抱きついたままの体勢でいる陸遜を見ると、馬超はすっと目を細めた。
「んー?あ、そうかまだ顔見たことないんだったな。こいつは陸遜伯言つって、呉の都督で軍師なんだよ。俺の文通相手。で、今周瑜殿と一緒にこっちに来てるんだ」
「ほう」
「よろしくお願いいたしますね…と、ええと、殿」
相変わらず抱きついたままの体勢で、陸遜は戸惑うようにを見上げた。
陸遜的に自分が一番可愛らしく見える角度である。
案の定、は可愛いなあと目を細めると丁寧に答えた。
「馬超孟起、だよ。年も割と近いから仲良くなりやすいんじゃないかな」
「よろしくお願い申し上げる」
瞬間、陸遜と馬超の間に見えない火花が散った。
心の声をここに出すならばこうなるだろう。
馬超:俺の殿を字で呼びつける上に馴れ馴れしく抱きつきくさって、どういうつもりだよアア?
可愛い子ぶったって腹黒なのはネタが上がってるんだぞ!(←姜維に聞いた)
陸遜:あーなるほど(心の中では呼び捨て)が可愛いって言っていたうちの一人ですか。
可愛いって言われてるからって思い上がってるんじゃありませんよ?は私のものです!
恐ろしい。
どちらも爽やかな笑顔の下で恐ろしいことを考えている。
が、当のはそんなことも知らずに呑気にそれを見ていて『お人形みたいだ…』と不気味なことを考えていた。
年下趣味も度が過ぎると他のものが目に映らなくなるらしい。
「そうだ、殿。しばらく殿の屋敷に泊めてはいただけませんか?」
「何!」
「え、いや別に構わないが。でも殿が用意してくださるんじゃないのか?」
「良いじゃないですか。久しぶりなんですから。積もる話も有りますし、ね?」
「それもそうか。久しぶりだしな」
こくりと頷くに陸遜は小さくガッツポーズを取ると青くなっている馬超を優越感を持った目で見た。
途端ぴきりと馬超の額に三叉路が浮かぶ。
「で、ですが殿!俺と酒を呑む約束があったではないか!」
「む。そういやそんな約束をしたような気もするな」
「でも何時呑むか約したんですか?」
意地悪そうに陸遜が突っ込むとが馬超の願い虚しくあっけなく首を振る。
「いんや」
「じゃ、私が帰ってからでも良いでしょう?」
「んー」
形勢不利を見て取ると、馬超は取って置きの技を出すことに決めた。
ちょっぴり悲しかったことを思い浮かべてからの顔を見る。
「殿、俺のことはどうでも良いのか?」
「うっ」
うるうると泣きそうな目を向けられ、は仰け反って悶えた。
可愛い。可愛すぎる。やっぱりそうだよなー、伯言は性格腹黒なんだよな、知ってるけど。
その点孟起は思いっきりピュア!清純派!可愛いー。だけど正直酒嫌いなんだよねー。
でもここで断ったら嫌われそうだし。どうしよう、俺。
激しい葛藤にもまれる中、はううんと頭を抱えた。
馬超の心中を知らないので馬超のことを清純派だと信じ込んでいる辺りが恐ろしい。
「よし、決めた」
しばらく唸った後では固い決意を表情に浮かべて二人に言った。
「俺は酒も呑まないし、家にも帰らない」
「ええっ。何ですか、それ!」
「だって仕方がないだろ伯言。片方の言うこと聞いたら片方が可哀想だしなー。不公平だろ?だから俺はお前をうちには泊めるけど俺は家に帰らないよ」
「じゃ、じゃあ何処に泊まるんだ?」
「とりあえず子龍の所。あそこだったら静かだし」
「子龍…ああ、趙雲将軍…って駄目ですよ!貴方が居なかったら私が寂しいじゃ有りませんか!」
「子龍殿は阿斗様のことで精一杯だからきっと無理だ!やめておけ!」
「いやそういわれても。それじゃ第二案にするか?」
「「へ?」」
にこにこと笑うとはぱん、と手を叩いた。
「孟起も俺の家に来て三人で酒を呑んでお泊まり。な、良いだろ?こうしたらお前達も仲良くなれると思うし」
「む」
「それは」
心の中での貞操を頂くことを計画していた陸遜、ならびにそれを阻止して自分が頂くことを計画していた馬超は詰まって黙ってしまった。
はそんな二人の様子を楽しそうに見ると、
「ま、返事は後ででも構わないからな。俺はちょいと錬兵場に行ってくるから決めたら言いに来いよ」
「待って下さい殿!」
「待ってくれ、殿!」
「そんじゃーなー」
はっはっはっはと爽やかな笑みを残しては足取りも軽く錬兵場へと去ってしまった。
「ああ」
「はあ」
残った二人は名残惜しそうにその背中を見ると互いを見てきっとにらみ合った。
「私の計画が台無しになったじゃないですか!貴方のせいですよ!」
「んだとぉ!お前のせいで俺の計画が台無しなんだよ!何してくれるんだ、おい!」
「可愛い子ぶったって私のほうが貴方よりも可愛いんですからね!二十歳より年上の人は可愛いなんていわれるべきじゃないんですよ!」
「うるさい、俺だってなぁ、殿の方が天然で可愛いとか思ってるよ!お前だって腹黒な癖に!」
「殿がわからなければ良いんですよ!大体なんです、私の殿をたぶらかさないでください!」
「誰が誰のだ!この餓鬼、殺す!」
アギャー!と一軍を率いる将で有るはずの二人が柄にもなく低レベルな戦いを繰り広げているのを周囲の人間が青ざめながら避けて通った。
「お相手願います!」
「我が正義の刃、受けてみよ!」
互いが互いの武器を取り合って構えたときだった。
「おやめなさい!」
「いい加減にしろ!」
バケツ一杯の水が二人にぶっかけられ、愕いた二人が犯人を見れば青筋を立てた諸葛亮と周瑜が空のバケツを持って立っていた。
「あ、やべ」
「しゅ、周瑜殿、これには深い訳が有りまして…」
「理由はどうでも良い。他国で諍いを起こすとはどういうことだ、陸遜」
「そうですよ、何であれ血を見るようなことはいけませんね、馬超殿」
「う」
「む」
暗転。
二人が軍師たちに捕まりみっちりお説教を受けている間、は鍛錬を終えて返事ももらえずにぶらぶらしていた。
「どうしたのかね、あの二人。全然こないじゃないか」
「二人って、誰です?」
傍に居た姜維が不思議そうに尋ねた。
「ああ、孟起と伯言だよ。俺の今日の対処を決めてくれるはずなんだが、さっぱり返事が来ない」
「へえ」
内容が大体つかめている姜維はそれだけを聞くと納得したように頷いた。
には可哀想だが、あの二人はが思っているのとは全く逆の性質を持っている上でのことが好きなのだ。
つまり、攻なのだ、二人とも。
は自分が攻だとばかり思っているのでのほほんとしているが、真実を知ったならば青ざめるだろう。
何せ、自分はおっさんで可愛げのかけらもないと思っているのだから。
可愛いものが好きなのもそんなところから来ているもので。
陸遜とは文通暦が長いせいかその性格を把握しているようだが、馬超のことは案外わかっていないようだ。
そんなに純粋であるわけが無いだろう、と姜維は心底呆れている。
超巨大ハーレムを所有していたとの噂の有る西涼のプリンスがそんなに綺麗なわけがあるはずがない。
女官を軟派している馬超の姿をは見たことがないのだろうかと姜維はいぶかしんでいた。
「でももう日も落ちますし。家に帰られたらどうなんです」
「いや帰ったらまだいけないんだよ。困ったよなー。やっぱ俺が聞きに行った方が良いのかね」
「と、思いますよ」
おそらくいがみ合って結論が出ていないだろうと思いながら姜維は苦笑した。
あの二人では到底反りが合わないだろう。
「ああ、でも家に帰ったらどうでしょう。私が二人に明日答えを出すように伝えておきますよ」
「良いのか?」
「ええ。大事な将軍が具合が悪くなられても困りますからね」
「有難うな、伯約」
にっこりと笑うと姜維はさっさと仕度をしてを錬兵場から帰らせた。
彼としても、純粋な友人を保護したいという気持ちは充分あったのである。
「さて、と。骨が折れますね」
こきっと首の骨を鳴らすと姜維はヘイヘイホー、と言いながらスキップで錬兵場を去った。
夕方。と言っても日が殆ど落ち、最早夜に近い。
ようやくお説教から解放された馬超と陸遜が争うようにして錬兵場に向かって走り始めた。
「くっ、しつこいですよ、馬超殿!」
「お前こそいい加減諦めろ!」
「はい、ちょっと止まって下さいねー」
「うわっ」
「ぐえっ」
姜維が槍を通せんぼするようにすると見事に二人が腹の辺りを引っかからせた。
カエルのつぶれたような声を出して馬超が呻いている。
「伯約、何するんだ!」
「そうですよ、私はこれから愛のゴールインをするんですから!」
「何、まだそんなことを言っているのか、このマセ餓鬼!」
「はいはいストップストップ。良いですか、黙らないと無双乱舞出しますよ」
姜維は笑顔で背中にくくりつけたものを見せる。
「趙雲殿にお借りした阿斗様つきで」
「「………」」
何処からか趙雲の悲痛な声が聞こえてくるのだが二人は気のせいにすることにした。
すっかり黙った二人を満足げに見ると姜維は二人に告げた。
「良いですか、殿が可愛くて仕方がないのはわかりますけれども、無駄に争わないでくれませんか」
「無駄に!そんなことなんか微塵もありませんよ!」
「そうだぞ、俺は殿の貞操を守ろうとしてだな」
「そう言いながら貴方も狙ってるじゃないですか!」
「黙ってくださいって言ったでしょ」
「ほぶっ」
馬超に一発くらわせると姜維は話を続けた。
「殿を可哀想だとは思わないんですか?ずっと錬兵場で待っておられたんですよ、殿は」
「私のことを…そんな、待っていらしただなんて」
ぽっと頬を染めて陸遜が照れる。
「俺のことを待っていたに決まってるだろ!勝手に決めるな!」
「だから黙ってくださいって」
「はうあっ」
陸遜に一発決めると姜維はふうっとため息をついた。
「お返事は明日にお聞きするそうです。殿には帰っていただきました」
「ええっ」
「お預けかよ!」
途端に不平を言い出す二人に姜維はぴくぴくと額に青筋を浮かべると、今頃呑気に眠っているであろうのことを思い浮かべた。
空はもう、大分暗い。
「良いですか、断じて夜這いなどかけないように」
「そういえばその手がありましたね」
「頭良いな、伯約!」
「だからするなって言ってるでしょう!」
いい加減にぶちきれると姜維は思いっきり眠っている阿斗を使って無双乱舞を二人にかけた。
「ぎゃー!」
「うおっ!」
ポーンと空高く上った二人がお星様のように光ったとか光ってないとか。
「ふう、一仕事でしたね」
爽やかな笑みを浮かべると姜維は額の汗を拭って空を見上げた。
夜中。
はのんびりと眠りこけていた。案の定と言うか腹を出したままで寝ている。
正確には着物が肌蹴てほとんど見えた状態だった。
「…で、何で貴方がそこにいるんです、馬超殿」
「お前こそなんでここにいるんだよ、陸遜!」
夜空のお星様になってもめげずに夜這いをしかけているのは勿論馬超と陸遜だった。
視姦まがいの視線でじろじろを見たまま再び寝台の両端で対峙している。
その視線を知ってか知らずか先ほどからは寝苦しそうに眉をしかめさせていた。
「ん〜」
ころん、と何度も転がる姿も愛らしい、と陸遜はため息をついた。
さながらその吐息の色は真っ赤だ。多分血も混じっているような気がする。
「…よし、俺は決めた!」
がっとその隙に馬超は寝台に乗るとの肩を掴んでそのままぶっちゅーっと口付けをした。
「あ、ずるいですよ馬超殿!」
「うるさい早い者勝ちだ」
唇を離すと今度は首筋に口付ける。
陸遜も負けられないと思ったのか続けてに口付けた。
「じゃあ俺はこっちも先にいただくと言うわけで」
「さっきから図々しいですね!私です!」
「………うるさいな、誰だよこんな遅くに…って孟起に伯言!何してるんだよおい!」
「え?何って、なあ」
「ええ、ナニ、ですよねえ」
急に仲良くなってにこにことする馬超と陸遜に目を白黒させるとはがばりと起き上がって二人から遠のいた。
「ナニって何だよ!今日のことだったら別に怒られるようなことじゃないだろう?」
「別に怒ってないぞ」
「ええ、勿論ですよ」
「じゃ、じゃあ何でこんなことすんだよ!」
笑顔の二人がじりじりと近づいてくるのが何故だか恐ろしくてはじりじりと更に後ずさった。最早青息吐息である。
「「可愛いからだ(です)」」
「可愛くなんか無いって!俺おっさんだし!髭生えてるし!大丈夫かお前ら!」
「えー、殿には言ったじゃないですか、私は髭が生えてるのも好きですって」
「俺は殿だけは可愛いと思うぞ、男ではな」
「……俺一遍に二人も相手できないんだけど」
「大丈夫ですよ?殿はマグロになってれば良いんですから」
「3Pって言葉、知ってるか?」
「……もしかして俺が受けるの?」
まさか、という目でが二人を見上げると、同時に二人が頷いた。
「ギャーッ!」
「それじゃ、良かった方を後で選んでもらいますからね、殿」
「俺の方が良いに決まってるだろ!」
の叫び声があがる中、二人は一斉に獲物に飛び掛った。
翌日。完全に腰が駄目になってしまった哀れなおっさん、は女官達に介抱されながら黄色い太陽が窓の外に浮かんでいるのを見ていた。
「何で俺なんだよ…絶対逆だって思ってたのに…大体二人一遍って何だよ?無理だって」
しかも二人のどっちが良いかだなんて選ぶ前に意識が飛んでしまった。
御蔭で今朝方見舞いと称してやってきた二人に今夜もやるとの嫌な宣言を聞いてしまった。
「そうだよ、本気で今日どっかに逃げないと壊れる……どうしよー…うああああ」
壊れたら壊れたであの二人のことだから永久保障でもしてくれそうだがは二度と軍を指揮することが出来なくなってしまうだろう。
そんなものは願い下げだった。しかもそんな永久保障を受けるだなんて恐ろしくて考えたくも無かった。
「殿、殿!」
「あー伯約ー、俺近々死んでるけど後始末は頼むぞ」
「あの二人ですね!くっ、消し炭にしておくべきでした!」
「んー、そうだなー」
「確りしてください、殿!」
「俺が死んでも…家の意志は…」
「死なないでくださいよ!大体台詞が違います!」
真っ白になって孫堅のあの台詞を呟く。
残念ながらには子供も兄弟もいないので継ぐ人はいない。
「あ、そうだ、今日から伯約の家に泊めてくれないか?頼む!」
ぽん、と名案を思いついたような表情になるとは姜維に頼み込んだ。
「構いませんとも。…ああ、今策が閃きました」
「何だ?」
「それはですねー、終わってからのお楽しみです!」
「ふうん」
ともかく今晩の危機は回避されたとは喜ぶと、姜維に手伝ってもらってお泊りの準備をした。
その夜。
性懲りも無く再び陸遜と馬超がこそりとの部屋に忍び入った。
「殿、今日こそ俺が一番になってみせる!」
「何を言うんです、私こそが殿の一番ですよ!」
しばしにらみ合うと、がばっと一斉に寝台の上に包まっている人物に飛び掛った。
「殿!」
「殿!」
瞬間ばっと敷布が翻り、目の前をふさがれた二人に冷ややかな声がかかった。
「残念ですね、殿ではなくて」
「本当に、残念だったな」
「しゅ、周瑜殿…」
「丞相まで…」
「問答無用!」
さっと青ざめた二人がビームを浴びせかけられたのは言うまでもないことで。
「ごめんなさいごめんなさい!」
「許してください丞相ー!」
「まだだ!」
「もうしばらく地獄を味わいなさい!」
きっちりこってり空が白むまで二人は油を搾り取られた、という。
因みにこれ以降の年下趣味がぴたりと収まったというのは、また別の話である。
[終]
後書き>>
無駄に長いような気がします。しかも陸遜…とうとう出してしまった。
基本的に彼には腹黒を希望します。その方が面白いので。(言っちゃった)
おっさん主人公は好物なので割合楽しく書けました。おっさん好きだ!(何)
最後まで読んでくださり、有難うございました!