貴方を愛していた
貴方を愛してしまっていた
貴方を愛している!!!!
だからもう仕方が無いのだ
番狂
ゆらゆらと水面の様に天井が揺れる。否、揺れているのは見ている眼の持ち主であった。むせ返る様な汗と体液とが混じり合った退廃的な空気が籠る中、眼の持ち主である男――はもう一人の男を視界に見出した。正確にはこのもう一人の男であり主君であり恋仲でもある、毛利元就こそがを揺らめかしているのである。串ものの様に自らの内側に打ち込まれた楔の形をはっきりと認識すると、は少しだけ頬を赤らめて嗚呼、と小さく嘆息した。
身の内に埋まった体積は、同じ肉塊であるにも関わらず他のどの部分よりも熱く柔らかく、それでいて別の生き物の様な獰猛さを持ち合わせてを苛んでいた。一体どれ程の人間の内側をこの楔は暴いて来たのだろう。数えるだけに馬鹿な話で、幼い頃よりこの楔の持ち主を知るはすぐさま考えを放棄した。
嫉妬することが出来る程大層な身分ではないものの、いささか気分が悪いのは確かである。故に、かもしれなかった。気付けばは珍しくも唐突に浮かんだ思いをそのまま口に出していた。
「あの、元就様。ずっと疑問に思っていたのですが、何故俺が下なのでしょう」
「……それをこの状況で聞くのかい」
意外そうな表情で苦笑するも、興が削がれる事は無かったのか元就の剛直が萎える兆しは感じられなかった。ほっと安堵するものの、申し訳なさは変わらずはより確りと脚を元就に絡めると瞼を閉じた。
「申し訳ありません」
「いや、構わないよ。が何か違う事を言うのは珍しいからね」
「ぁっ」
絡めた脚の片方を乱暴に掴むと、元就は乱暴な仕草で揺さぶっていたの角度を変えた。抉る角度が変わった事で慣れていた形が崩れ、思わずが咽せる。だがそれも少しの事で、速まる腰の動きに攫われてゆく内に違和感は霧散していった。
要するに巧いのだ、と攫われきれなかったの冷静な部分は素直に分析していた。そうでなければ勿論あれだけの女性達を満足させる事は叶わなかったろう。一見隠遁した人間らしい様子であるにもかかわらず、現役の武将であるを軽々と料理してしまうその体力もさながらだが、技巧も十分であった。
ひょっとしなくとも件の曲直瀬道三が著したという閨房術の書でも学んだのかもしれないが、の与り知るものではなかった。少なくとも、は閨の指導は行っていない。故に、親交を深める手段としても武将の間で大いに流行した男色の交わりをは他の武将と持つ事はあっても最近まで元就と褥に上がる事は無かった。
元就の腰使いが益々激しくなり、自分もまた、息づかいが荒くなるのを遠く聞きながらは元就の顔を見上げた。絶頂を間際に控えた表情は老いも何もかも覆して、ただ壮絶な色香を持っていた。
結局、何故自分が下であるのか、という問いに答えは得られぬまま翌日を迎え、何事も無かったかの様に日々は過ぎて行った。閨に呼ばれる事も無く、はただ悶々としながら今日も緩んだ身を引き締める様に冷水で顔を洗う。
手水鉢に映る自分の顔を、は大層久しく見ていなかった様に感じた。否、これまで見てはいたものの意識していなかったのである。久方ぶりに見る自分自身の顔は、元就のそれとは違って確かに時間の流れが堆積していた。勿論実年齢も元就よりも少し上なのだが――――矢張り、元就の年の取り方は少々ゆったりとしているように思われる。
兜擦れが出来る程戦場に繰り出した結果、いつしかは髪を短く切る様になっていた。今では黒く濡れた様な色だと称された髪にもちらほらと白い物が入り交じってしまっている。削いだ様な貧相な顔はいつもの通りで、これは若い頃からと少しも変わらず、尖った鼻先も含めてもう少し貫禄や威厳が欲しいとは嘆息した。
こんな顔が閨でどんな風になるのかには全く見当もつかない事だった。元就が萎えないのだからそれなりの筈なのだが、どう足掻いた所で面白いものになりそうにもない。矢張り自分が下であるのはおかしいのではないだろうか、とは顔を拭くのも忘れてもう一度まじまじと手水鉢の中を覗き込んだ。
「一体どこが良いのかねぇ」
「そんなところで何してるんだい、」
「別に、何も」
努めて平静を装うと、は乱暴に手ぬぐいで顔を拭って後ろを振り返った。予想に違わず佇む人は元就である。どこか楽しそうに小首を傾げると、元就はまるで使いを頼む様な気軽さで続けた。
「、今晩私の所に来てくれるかい」
「はい」
取り立てて用事はないのだから困らないのだが、薮から棒の流れについて行く事が出来ずは眼を白黒させた。元就の頭の回転が速い事は幼い時分から了解している事ではあるが、脈絡の無さについていけるかどうかはまた別の問題だろう。だが元就はの承諾一つで事足りたらしく、満足げに鼻歌を歌いながら廊下を歩き去って行った。
「今夜、ね」
もう一度手水鉢を覗き込むと、はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。矢張り色気のかけらもへったくれもありはしなかった。
とは言え、の寝子としての経験はそれなりに豊富である。何しろ親交を深める相手はよりも目上であったり年上であったりするものだし、同世代であっても経験が無い者は必要以上に下になることを恐れていた。故に気付けば寝子の立場をする事も珍しくも何ともないのだが、それでも美少年でも美丈夫でも無く、矮躯でも痩身でも無い自分を組み強いて快感が得られるとは想像出来なかった。
元就とのこの関係づけもそもそもは勢いの様なものである。第一元就に下の経験が無い以前に男性との経験が無い事は丸わかりだった。だがそれでも自分の立場に疑問を抱いてしまうのは、多分にも少々雄めいた部分がまだあったという事なのだろう。
手ぬぐいを肩に引っ掻け歩き始めると、はつらつらとこれまで自分を組み敷いて来た男達とのことを思い返した。大概は戦がらみであった様に思う。何しろ死と隣り合わせの商売であるものだから、何時死ぬとも知れないという興奮が奇妙な意味合いにすり替わりがちだった。故に、互いの顔も身体の形も正直どうだってよく、穴があってそこに埋まれば良いという実に粗雑なものである。
他の幾つかは戯れな様なもので、確かにそれは思慕の情が入り交じったものであるかもしれなかった。彼らは何と言って自分を抱いたろうか。どんな風に抱いたろう。平和となった今ではの記憶は風化しがちで、全てが曖昧模糊としていた。
ただ思い当たるのは自分が実に男らしいという一点の事実につきる。ならばそんな男を組み敷くことは、支配欲であるとか征服欲であるとかをくすぐるやもしれなかった。にそんな趣味は無いが、そうした趣味を持つ人間がいる事は認識している。では元就はどうなのだろう。
つらつらと考え、は無意味だと首を振った。元就の欲の源を分析すること事態は意味が無かった。自分もまた元就を抱きたいと思っている、それだけで良いではないか。最も主従関係というものは思いの外の頭の上に重くのしかかっており、兄やとしての付き合いを以てしても乗り越えられるようには感じられなかった。
不安を紛らわせる様に唇に触れると、かさついた薄い唇も矢張りどうしようもなく貧相だった。いつぞや戯れの様に重ねられた直江兼続の唇を思い出し、途端、火が出る程に顔が熱くなる。女の様な、否、女よりも魅惑的なあの唇に咄嗟に反応しなかった自分をは心の底から褒めてやろうとつくづく感心した。ああいった唇ならば何度齧りついたって飽かないだろう。
「何でこんなに薄いのかね」
女ならば紅でも引いて多少見栄えがする様工面出来るだろうが、ではそうもいかない。だがこんな唇に元就は楽しそうに吸い付いて来るのだ。可愛らしくも愛しい気持ちが芽生えると、は戯れに指先を口内に滑らせた。今夜、と言われたにもかかわらずどうしようもなく今元就に口付けたかった。
「大殿。失礼致します、です」
「お入り」
常と変わらずがするりと室内に入り込むと、室内は既に褥が敷かれ、後は寝るばかりといった出で立ちの主が脚を崩して書を読んでいた。何ら変わらぬいつも通りの逢瀬の筈である。が、は戦場で培った勘か、妙な違和感を感じ取っていた。黙したまま原因を探るべく室内に目を遣り、はひたりと一点に焦点を定めた。
背の高い、薄い壁の様なものが布をかけられて褥の脇に立てられている。形状から判断するに姿見ではないかと推察された。しかし何故そこに姿見があるのか見当もつかず、はもやもやとした不信感を漂わせながらも元就が手招くままに褥に上がった。
「前回、何故が下なのかって訊いてくれたよね。私なりに答えようと思ってあれこれと考えてみたのだけれども、なかなか上手い考えが思いつかなかったんだ。男同士でつき合った事が無かった事もあるけれども、正直、意外でね」
「……申し訳ございません」
悩ませるつもりは少しも無かったのだ、と言い訳を呟きそうになっては苦笑した。そんな筈は無いのだった。は元就の性格を知り尽くしていたし、こぼした言葉は我が儘の様なものだった。今だって元就を抱いてみたいという冒険に憧憬を抱いている。
だがそれよりも先に口づけたかった。手を出そうとする元就よりも先に動くと、は驚く元就の上品な唇に齧りついた。自分の唇がかさついていることに対する苛立は一瞬の事で、溺れてしまえば何もかもがどうでもよくなってしまっていた。元就は当初こそ面食らったらしかったが、今では余裕を持って楽しんでいる様に見受けられる。
ひょっとすると、今日はこのまま押し切る事も可能なのではないか。くちゅくちゅという水音に別のものを想像しながらはちらりと希望を抱いた。
「元就様、」
「ん、なんだい」
快楽の淵に落ち込み始めたのか、いつになく元就の返答は緩慢だった。そんなところまで可愛らしいと唇の端を上げると、はわざと元就の顔よりも低い位置に顔が来る様体裁を整えた。自然、眼は上目遣いの様になる。自分では解らないものの、元就が喜ぶのならばはこんなことなどいくらでもやることができるのだった。
「今日は、俺が御奉仕させて頂きたいと思います。宜しいでしょうか」
「え、本当に良いのかい。そりゃあ私は構わないけれども」
「はい。いつも元就様にして頂くばかりでは申し訳ありませんし」
満面の笑顔を浮かべてもう一度畳み掛ければ、あっけなく謀将元就も陥落する。姿見の存在は相変わらず気になったものの、は無視して口付けを再開した。元就を柔らかく押し倒し、あちらこちらに口付けを落としながら剥いて行く。相変わらずしなやかな体つきだ、と小さく感嘆の声をあげるとはするりと元就の陰茎を撫でた。
まだ下帯の上からだというのに僅かな反応を見せるそれを形を確かめる様に撫で回すと元就の鼻から拗ねる様な息が漏れる。期待しているのだ、とは嬉しくなってそのままやや力を込めて擦った。常とは趣向が異なりつつある事を悟られぬ様、空いた片手を元就の手指に絡ませ、甘える様な口付けを繰り返した。
もどかしいのだろう、不服気に、何かを期待する様な眼で元就が訴えかけて来る。ぬるい愛撫だということはハナから承知だ。丁寧に整えられた下帯の隙間から手を侵入させると、は期待に応える様に元就自身を直接握り込んだ。
「ぁっ」
あからさまな嬌声に腰が疼くものを覚え、は背筋を奮い立たせて愛撫を続けた。何度も見て今では眼を閉じたってはっきりと形状が想像出来る代物を可愛がり続けてやると、とうとう音を上げた様に涙を零し始める。言葉で嬲っても良かったかもしれない、と思っては自分らしくもない発想に歯を見せて笑った。それは獰猛な衝動だった。
「何だか、……今日は……ぁぁっ……違う、ね」
「そうでしょうか」
元就の瞳の中に稲妻の様に怯えが走る。手つきは益々乱暴となり、は文字通り元就の喉元に噛み付いた。掌の中で元就の分身が爆ぜ、下帯の中をしとどに濡らして行く。元就は少なからず衝撃を受けているらしかったが、の知る所では無かった。
戦場で敵に襲いかかる時の様な戦慄を覚えながらは乾いた唇を舐めた。元就の喉が鳴る。濡れた下帯を取り去ると、むっとするような精の匂いが立ち上った。粗相の様な惨状には幼い頃、こうして彼の粗相を処理した事を思い返して苦笑した。
「元気ですな」
「な、」
「元気であるのは良い事です」
含みも無く快活に笑うとは既に反応し始めている陰茎と下腹部に満遍なく吐き出された白濁を塗りたくった。べとべととした感触は嫌いではない。少し弄ぶ様にすると、は再び身を屈め、元就の股に顔を埋めた。元就と言えば、混乱しているのか息づかいが乱れたままである。
蕩ける様な表情に、は確かめる様に舐めていた舌で先端部をつるりと舐め上げた。塩の様な、何処か苦い味わいに少しだけ顔がしかめられる。舐めとると嬉しくて溜まらないという様に手の中で茎が跳ね、ぬるりとした感触も相まってまるで鰻の様だとは小さく感嘆した。陰嚢を揉みしだき、その下も弄ろうかと考え、は結局止す事にした。
何しろ体力が自分よりあるということは元就の精力もまた然り、ということだった。この愛しさすら感じる器官に幾度気絶されたか知れない。もう少し体力を削いでからだ、と自分に言い聞かせるとは口をかぱりと開いて元就を飲み込んだ。
「……っ、今日は随分頑張るんだね」
元就の手が短い髪をかき混ぜてくる。どうやら上半身が空いている事から飽いたのか、起き上がってしまったらしかった。心の中で小さく舌打ちすると、は黙って奉仕を続けた。奥深くまで銜え込むと、流石に息が苦しくなり小さなうめき声が漏れてしまう。それでも構わずだるくなって来た顎を叱咤すると、は激しい上下運動を開始した。元就が息を呑む。
ちらりと見上げると、ひどく上気した顔にぶつかって背けられた。どうやら気恥ずかしいらしかった。征服した様な、そんな心地になって眼を細めると、は喉を締め上げた。口内で陰茎が瞬間膨張し、喉奥に体液を叩き付けて萎んで行く。ゆっくりとそれらを咽せぬ様飲み干すと、はそろそろと獲物を解放した。
「大丈夫かい。随分無理をしたみたいだけれども」
「大丈夫ですよ」
慣れていますから、とは続けずに少しだけ咳をするとは冷静に元就の状態を観察した。元気である。どうしようもない程に体力が有り余っている事実に、は途方に暮れた思いだった。矢張り一度くらいは自分の中に迎えなければ駄目だろうか。否、そんなことをすればこちらの体力が完全に切れてしまうことは眼に見えていた。同意一つまともに得る事が出来ない現実は厳しいものである。
手を出しあぐねている内に元就の手が伸び、唇の端についていたらしい白濁を拭われる。追いかける様にして指先を舐めると、元就が眼を細めて笑った。
「そんな物欲しげな顔をされると、どうしたら良いのか解らなくなってしまうよ。……そこの布をとって御覧」
「はい」
物欲しげな顔とは一体どんなものだろう、と小首を傾げながらも命令に従い、は立ち上がって件の姿見らしきものの布を取り払った。意外でもなんでもなく、矢張り姿見である。こんなにも大きなものを見るのは初めての事で、はほうと感嘆して見詰めた。行灯の灯で薄暗いものの、自分の顔は常に無く上気し、瞳に水が張っている。唇を舐めれば、鏡の中の自分もぬらりと光る舌を出していた。
「大きいだろう。これほどのものは珍しいからね、取り寄せるのに時間がかかってしまったよ」
「わざわざお取り寄せになられたのですか」
見蕩れていると後ろから擦り寄って来た元就が耳元で囁く。くすぐったさに身をよじると、耳に舌を差し込まれて制された。仕方なしに鏡を向くと、鏡の中の元就に吸い寄せられる様にして目が合う。思いの外熱を持った眼にたじろぐと、元就は矢張り眼を鏡の中に遣ったままの夜着を解き、常の様に勝手知ったる様子で指を滑らせた。
「ああ。これなら、説明しなくても君に教えてあげることが出来るからね。……さっきあのまま君に続けてもらうのも魅力的だったけれども、折角支度したものは矢張り一度使ってみたいだろう」
「俺に教えるって一体何でしょう……ヒッ」
「何って」
突然元就が胸の蕾を摘まみ上げ、はうわずった声を出して跳ねた。だが少しの動きも許さないという様に元就ががっちりと抱きかかえてしまっているので鏡から少しも眼をそらす事が出来ない。鏡の中の自分の眼は熱に浮かされた様で、半開きの唇が我ながら淫美だった。
惚けた様なの様子に元就は乾いた笑いを漏らすと、先程の奉仕で既に緩く立ち上がり始めていたの分身を下帯を取り払って緩く握り込んだ。唐突な衝撃を分散させることが出来ず、の足が生まれたての子馬の様に震える。
「も中々元気だね。膝つこうか。あ、眼を離しちゃ駄目だよ」
「は、い」
染み付いた従順な精神をは心の底から呪った。楽しげな元就の声の言いなりになって支えられるままに膝をつく。足を開く様に、と言われて足を開けばまるで鏡に向かって自分の下半身を突き出しているかの様な錯覚を起こして頭がくらりとした。
矢張り元就は自分の密かな魂胆に気付いていたのではないだろうか。鏡の中の自分は相変わらず貧相で武張っていて、そのくせ別人ではないかと思える様な媚びた空気を纏っている。こんな自分をは知らなかった。鏡の中の元就の眼に射抜かれて下腹部に熱が集中する。最早元就を抱きたいという野望は霧散してしまっていた。
「見て御覧、ここを弄るといつも気持ち良さそうにしているんだよ」
「あ」
ぐりぐりと乳頭を潰す様に捻り上げられると、は溜まらなくなって頭を振った。やんわりと元就に制され、覗いた鏡像は血が集まったのか蛇苺の様に膨れた乳首を震わせて喘いでいる。快感を追う自分を見せつけられるのはひどく恥ずかしく、同時にもっと見たい様な倒錯感をにもたらし混乱させた。
元就が首筋を噛めば、切なくなってしまった陰茎が天を向く。もっと直接的な悦楽が欲しかった。鏡の中の自分が欲しくて溜まらないと訴えている。まるで自分自身を抱いているかの様な錯覚のままには自分自身に手を伸ばし、擦り上げた。元就の啄む様な快感は断続的に与えられていたが、何よりも自分を満足させたくては我武者らに自慰行為に耽った。
「まだ駄目だよ」
「やっ」
後少し、というところで邪魔が入る。腕を掴み上げられ、は霞みに切れ込みが入った様に現実に返った。元就は苦笑すると慰める様に口付けをして指先を奥底に滑らせた。夢中になっている間に香油でも取りに行ったのだろう、滑る感触をまとった指先は実に簡単に訪問を済ませ、ひくつく襞をかき分けて行く。
「もっと足を開いて御覧。それとも、どうやって飲み込んだのか解らなくなったのかい……ほら、君のここは柔らかい癖に私の指を食いちぎりそうだよ」
言われるままに足を開くも、慣れた行為の筈が不思議と恐ろしくてたまらずは縋る様に鏡の中の自分を見た。大丈夫だという様に頷かれたような錯覚に安堵し、息を吐いた所で指が増える。元就が後ろから支えているがために、かつて目にした事の無い自分の恥部がまるきり曝け出されていた。
赤く、熱を持った別の生き物の様なそこは元就の指をやすやすと飲み込み離さない。寧ろこれだけでは足りないと訴えているかの様にの眼に映った。これが自分の身体の器官だとは到底信じがたいことだった。
同様に唇は元就のもう一方の手に苛まれており、溢れるままの唾液でだらしないことになっていた。欲だ、とは元就に与えられる快感以上の感覚に震えると濡れた眼の自分を見詰めた。確かに貧相には違いないが、淫蕩で淫乱で弄びたくなる様な堕落した男がそこにいた。もしが他人だとしたら抱けなくはない、と鼻を鳴らしていると、元就が腰を下ろす気配がする。
「そのままゆっくり腰を下ろして……そう、上手だね」
「は、……ぁ、もっとゆっくり……っ」
「ごめん、出来そうにない」
「うぁぁぁぁぁっ」
狙い違わず広げられた孔に再び勢いを盛り返した元就の陰茎が押し当てられ、問答無用に入り込んで行く。その全てがの目の前でも展開されていた。これでは二重に犯されている様なものだった。奥まで入り込んだ瞬間衝撃で待ちくたびれたの陰茎がはち切れ、放出された白濁が鏡の中のを汚す。
汚したのが鏡なのか自分なのか、最早には判別がつかなかった。感じ取れるのは元就の熱と、どうしようもなく色めいた自分の姿だけで、精神が焼き切れる様な快感に押し流される。せめて元就を確認したくて振り向くと、元就が初めて向き合って口づけた。
「ああ、すっかり汚れてしまったね」
「……汚れたのは誰のせいですか」
何度か数えるのも嫌になる程の交合を終え、予想に違わず体力を使い切ったが布団に倒れ込むと、未だ余裕を持った様子の元就がのほほんと鏡を見遣った。上半部は概ね無事であるものの、下半分は眼を背けたくなる程の体液で汚れていた。それが自分の唾液や精液であることをは勿論知っていたが、出す原因となった人物の方が悪いと責任を預けた所で悪くはないだろう。
自分が使い物にならなくなってしまっている以上、片付けを他のものに依頼しなければならないことがは今から憂鬱で仕方が無かった。元就の手が思わしげに頬を撫でる。振り払う気力も無く、そのままにしておくと元就は優しく髪を撫でて来た。
「いやぁ、が積極的になってくれるだなんて中々ないだろう。それに、一度解らせておきたかったからね」
「何をです」
「こんなに可愛くて厭らしい子は私を襲えないってことさ」
「なっ」
「図星だろう」
ぎくりと身を強ばらせると、元就は人の良さそうな糸目を少しだけ開けた。眼が笑っていない。ほんの一瞬でも妙な気を起こした自分をは心の底から後悔した。
「でも今日は本当に気持ちよかったね。も興奮していたみたいだし、また使おうか」
「お断りします」
ぴしゃりと言って退けるとは起き上がろうとし、顔をしかめた。内股にぞわぞわとした悪寒が走る。始末の悪い事に、の変化に目敏く気付いたらしい元就の腕ががっちりと腰に廻されていた。
「じゃあせめて処理に使おう」
「厭ですって、お手を煩わせずとも自分でできますよ、こんなこと」
「駄目だよ。これは私の責任だし、きちんと処理しなければ困るのはだろう。ああ、随分入ってるね」
「ぁ、あ、だからやめっ……いぁっ」
顔を青くしてももう遅く、かくては再度自身の持ち回りというものを認識させられるはめとなったのだった。十中八九処理だけでは済まないだろう。因果なものだと頭を抱えると、は艶然と鏡の中の自分に向かって微笑んだ。
惚れてしまったことが全ての敗因ならば、最早どうにもならないのだった。
〆.
後書き>>
と、いうわけで大殿初裏です。そして今までに無く真面目にエロを書きました。大殿はテクも凄いと思うんだ。そして絶倫だと信じて疑わない。途中で主人公の気が変わっていたとしても勝てない罠。それが大殿クオリティです。(何)
最後まで読んでくださり、有り難うございました!