私のために変わったならば、なんと愛しく哀しかろう
結んで開いて永遠に
数多の戦が繰り広げられた。それでも戦は終わらない。敵の首魁は杳として知れず、政府が報せた”歴史を改変すべく動いている”という彼らの目的すら、本当であるのか怪しくなっていた。それでも他に縋るものもなく、下知に従うのみであるのは、偏に今の生活を続けたいからだ、とはぎゅっと閉じていた瞼を開いた。残像で目の前がきらきらと輝く。この世は残像とさして変わらない幻だ。
「様が、お目覚めされました!」
「まことか、へし切の!」
「良かったあ、本当に、今回は、」
「泣くなよ加州。が心配するだろ」
「……そういう和泉守も泣いているようだが」
「君もだろう、山姥切。……僕も、かっこわるいけどね」
俄にわきたつ周囲に、はもう一度寝た方が良いだろうかと思案し、起きたままにしておいた。周囲にわらわらと刀剣男士達が集まって来る。へし切長谷部、陸奥守吉行、加州清光、和泉守兼定、山姥切国広、燭台切光忠、後から来て快哉を上げているのは歌仙兼定に蜂須賀虎徹、ついで大倶利伽羅だろう。あんな風に大倶利伽羅は声をあげるのか、と驚いたものの、それを話すように口を動かす事すら出来なかった。満身創痍なのだ。
は、審神者である。戦いの専門家ではない。だが、時の政府による下知に従い、名刀達を付喪神へと化生させて共に前線に立っている。同じようにして、世界中で神の恩恵を受けた者達がそれぞれのやり方で戦っていた。歴史とは、今ある自分をなすものであるから、それを改変しようと手を入れるものを打ち破る必要があるのだ。薄々、は自分が生きている間に終わる事は無いだろうと、何一つとして定かではない戦局を見ていた。
そして今、は前線で不意打ちを受けて倒れていた。事前に受けていた情報とは異なる場所から敵が現れたのである。お陰で、兵の並びが手薄であったの背後から襲われ、刀剣男士が駆けつけるよりも前に倒れてしまった。あの時代から戻れたのは奇跡としか言いようがないだろう。ふわふわとした意識の中で、起き上がれるようにならないな、と悟った。自分に付き従う彼らには悪いが、自分は時間切れだ。人間という短い時間を授けられた生き物の限界に対し、なんとしてもつなぎ止めようとしてくれた彼らに申し訳ないなあとは思う。この後の彼らの行く先は作ってあるが、彼らの心に深い傷を残してしまうに違いない。
『馬鹿な子だね』
『アメノウズメ様。お久しぶりです』
再び意識の底に沈んでいると、入り込む気配があった。の氏神・アメノウズメである。くるりと巻いた美しい髪を持つ、いかにも遊んでいそうな見た目をした美女であった。ほんの少しだけ古い格好をしており、の記憶では1980年代の風合いだが、一周回って今流行っているのかもしれない。古代に名を残す遊び女は、流行を取り入れる事矢の如しであった。
『全く。何でさっさと喚ばないんだい。お陰でぎりぎりになったじゃないの。自分の子を見殺しにする程、私は冷たくないんだよ』
『人間ですもの、いつかは死にますよ』
『違うだろう。あんたはもう背負うものを背負ってるんだ、それもあんな新米の子達ばっかりだよ?置いて行くのはひど過ぎやしないかい』
『……確かに気がかりですけど』
再度目を閉じてしまった事に対し、悲嘆の声が上がっているのが聞こえる。幼子のような彼らの声は胸に響いた。
『どうしたいかい、。特別可愛がって来たお前には選ばせてあげるよ』
何をか、とは聞かずとも解った。人としてこのまま去んでしまうのか、それとも神として化生するかと言っているのだ。後者を選ぶ事は、自動的に刀剣男士達がかねてから願っていた通り、彼らの嫁になる事でもある。大きな決断だったが、は以前から既に答えは知っていた。ただ、踏み切れなかっただけである。
『お母さん、私、あの人達と一緒に居るわ』
『良いよ。ああ、こんな形であんたの嫁入りを見るとは思わなかったね。もっと神格の高い婿を捜しておけば良かったよ』
『それ、あの子達に言わないでくださいね』
妬いて仕方が無いから、と言うと、女神は朗らかに笑った。それきり、闇は終わった。
空気が震えている。全てが自分の身体を刺すようで、長谷部は落ち着かずに居た。先頃、生まれて初めて祝言を行ったのである。かつて陸奥守主導で見ていた結婚式なる華々しいものとはまるきり違っていたが、幸せでたまらなかった。あの、主と、自分とが、主従ではあるが一種の対等な関係を結んだのである。更に言うならば、は人ではなくなった訳でーーこれから永遠に自分とともに居られるのだ。
の意識がなくなり、これはもう今生の別だとこの上なく絶望したのは半日前の事であるのに、何故だか遠い昔のような気さえしている。すいっとが深い眠りに落ちた、と思えば不思議な女人が唐突に現れて彼を起こしたのだ。傍に居るだけで眩しく、ひれ伏したくなるような美女はアメノウズメ、この国の神であれば誰もが知る古の神である。生まれて初めて見た、付喪神ではない真っ当な神に、刀剣男士達は声すら失っていた。自分達では及びもつかない。彼女はを我が子と呼び、『致し方ないからお前達を婿にとるが認めた訳ではない』『泣かせたら存在を消す』と散々脅しながら結婚させたのだった。耳まで真っ赤に染めて、お母さん恥ずかしいからやめてください、というは正直な所、愛らしいとしか言いようがなかった。客観的には、容姿の劣った中年男性(それもオネエ)がくねくねとする様は気持ちが悪いものかもしれないが、長谷部にとってはまごう事なき掌中の珠である。
『じゃあ早速初夜だね。ーーお前達!の初めてを欲しいか!』
「はいっ!」
女神の明るい声に、刀剣男士達は速やかに呼応した。はいたたまれないのか、耳を指で塞いでしまっている。初めて、という単語に胸が躍って仕方が無かった。長い年月を生きて来た主が生娘であるというのは重畳だ。勿論、刀剣男士達にとっては、全てが初めてである。そういえば、切羽詰まって思わず長谷部が口付けた際に、は半分涙ぐみながら教えてくれたものだーーこれが初めてだ、と。あの時は一週間近く余韻にひたったものだった。
『では神聖にくじ引きを行うので引くように』
「くじ引き」
ぼん、と出された箱に、和泉守が思わず呟く。他の男士も皆思いは同じだ。
『なんだい、私のやり方にケチを付ける気かい』
「めめめ滅相もありません!」
『だったらさっさと引きな』
流石は神格が違うだけあり、迫力は遥かに上である。気圧されるようにして、男士達はくじを引きーー何と言う事だろう、長谷部が最初の権利を得たのだった。尚、他の男士達にも勿論と共寝する権利はあるのだから、数字が書かれたくじ引きの結果通りに粛々と行う予定である。はげっそりとした様子でその並びを見ていた。確かに、一人で全員を受け持つのは少々酷というものだろう。恐らくは全員が全力で取りかかるだろうし、誰が一番の夫に相応しいかと争い合うに違いない。
だがそれはそれ、ともかく今は長谷部の番だった。先にアメノウズメはに手ほどきを行い、続いて刀剣男士達だけに彼女から夫としての勤めについて手ほどきを行った。互いにそれぞれ風呂に入り、今正に行為をすべく、主の部屋の前に立っているのである。
「……長谷部です。入っても宜しいでしょうか」
「ええ」
小さな声で応えがある。背を押されるようにして扉を開くと、がベッドの上で所在無さげに座っていた。いつもどおりのパジャマ姿なのだが、妙に艶めいて見えるのは、これが普段の添い寝とは違う目的で傍に寄るからだろうか。そうっと近づくと、長谷部は頭を下げてベッドの上に乗った。
「主ーー様、」
「何度も呼ばなくても聞こえるわよ。まだおじいちゃんじゃないもの」
「」
「はい」
緊張しているらしいを安心させるように、長谷部はゆっくりと抱きしめた。肩口に顔を埋めると、ひどく良い香りがする。山梔子の花の香りだ。は好んでこの香りを身につけていたから、今では山梔子を見るだけでを思い出すようになっている。ほんの少しだけ離れて、が誘うように唇を開いて長谷部を見つめた。途端、全身が火傷を負ったかのように熱くなる。明確に性的な意味を帯びて見つめられるのは、これが初めてだった。
「長谷部」
固まってしまった長谷部に対し、焦れたようにの方から口付けて来た。ちゅ、ちゅ、と音を立てて唇が食まれる。強請られるような様子に釣られ、長谷部はの後頭部に手をやって引き寄せた。噛み合わせを深くし、彼の全てを確かめるように舌を中へと侵入させる。こじ開けた先は自分と同じように熱く、何より甘かった。映画や何やら資料で見たようには優雅でも落ち着いたものでもなく、感情のままに行っているから呼吸が苦しい。それでも少しでも離したくはなくてぎりぎりまで続けていたら、がどんどん、と胸を叩いて来たので漸く離す。生理的な涙を浮かべると、がはあはあと荒い息を吐く。ちらりとこちらを見る目には、ほんの少しだけ怯えが覗いていた。多分、自分は相当獰猛な顔つきなのだろうな、と苦笑すると、長谷部は反省の意を込めて鼻先を軽くのそれに擦り寄せた。
「……どこで覚えて来たの、それ」
「いえ、今したいと思ったからしているだけです」
「本当に?」
「本当ですよ」
拗ねるような物言いに笑うと、長谷部は何度もの顔中を口付けた。どうやら思いの外自分はうまく出来たらしい。疑う程度には妬かれているのだ、という事実が嬉しくて仕方が無かった。
「何笑ってるの」
「いえ、俺は貴方に愛されているのだなあと改めて思いまして」
「好きでもない人と結婚する程、私も暇じゃないわよ」
「存じてます……俺も貴方をお慕いしておりますから」
「ありがとう」
屈託なく笑ってみせると、は困ったように耳元に唇を寄せて来た。彼の吐息を耳元で感じ、思わず身体が震えてしまう。幾度か想像はしたが、現実はどんなものよりも刺激的だった。
「ね、これで終わり?」
「にはしませんよ」
「ひゃっ」
甘えるような声に熱が集中してしまったが、長谷部は努めて冷静にを押し倒した。多分、優しくは出来たと思う。の目からはまだ秋波が消えていないから、続行しても良いという事だろう。駄目と言われても引くわけにはいかない。ここで撤退したとなれば、他の刀剣に永遠に引けを取る事になる。負けは認められないのだ。全てを確かめたくて、服越しに身体の線をなぞり上げる。以前にせくはら、をした際には散々抵抗されたり、あまつさえ気絶されたりしたものだが、散々添い寝もし、間近に触れてきた甲斐あってか、恥ずかしそうに目を反らすくらいで済んでいた。太ももを撫でる際に、思いついたように片足を立てさせると、長谷部は服の上から尻を揉んだ。割合に固い。映像等で見た、女性の胸や尻等から想像されるような弾力性も何もなかった。
「……女の子じゃないから、触っても気持ち良くないでしょ。萎えるから止めなさいよ」
「確かに柔らかくはありませんが、揉み心地は良いですよ」
「ぁ、あ、その触り方やめ、ぇ、っ」
ただ確かめるのではなく、性的な意図を持って揉むと、が嫌だと首を振った。冗談ではない。可能であれば、誰と寝ても自分を思い出すようにするくらいにはしたいのだ。印象づけるためならば、割合になんだってしようと思うし、そもそも次に触れ合えるのは他の面々が終わった後に決まっているから大分先になってしまう。後悔は残したくなかった。口を掌で覆って声を抑えるに苛つくと、長谷部は尻を揉むのを漸く止めた。代わりに、前へと手を伸ばす。中心に手を這わせれば、些か膨張しているように思われた。軽く握ると、そこが硬度を増している事が解り、長谷部は舌なめずりをした。主は確実に自分の手に反応しているのだ!これが喜びでなくてなんであろう。虐めるように少し摘んで遊ぶと、長谷部は必死で快感をやり過ごそうとする主の額に口付け、首筋を吸い、噛んだ。この肌に初めて痕をつけられる、というのが嬉しくてたまらない。
「明日、”これ”を見たら皆うらやましがるでしょうね」
「……もしかして、長谷部君って意外と性格が悪いの?」
「悪く悪くないの話ではありませんよ。自分の妻を独占したいと思っているだけです」
「つま」
「そうでしょう?」
真っすぐに正面から見つめると、はぽっ、と文字通りに顔を赤くさせた。ついで、うん、と小さく頷かれる。よくできました、と口付けると、もそれに応える。今度は最初のそれよりもずっと落ち着いてする事が出来たから、楽に呼吸をしながら、長く長く睦み合った。その間も、検分する手は止めない。パジャマのボタンを外し、今日は薄い下着を纏っていない事に驚いた。普段は綿のシャツを身につけているから、こんな風に胸板を直に見る事は出来なかったのである。肋骨を撫で、平均よりは少し盛り上がった胸を揉んだ。胸筋ではなく、骨が盛り上がっているのだ、という事は触れているうちに知れた。仕入れた知識によれば、この辺りは特に楽しめる部位であるらしい。
指先に触れた、小さな粒を摘むと、微妙に相手の反応が変わった。ぐるりと粒の周りを撫で、つんつんと突き、先端を擦る。そうして右側ばかり可愛がって居る内に、の乳首は段々と存在を主張するようになっていった。口付けを止め、身を離して様子を見れば、片側だけが赤く充血して妙に卑猥だった。もう片側も同じようにすべく弄りながら、長谷部は戸惑うに痛いですか、と柔らかく尋ねた。
「ぅ、い、痛くはない、……なんだか、その、んっ、むずむずするっ」
「それは良い傾向ですね」
「ちょっと、あ、うそ、やめ、ひんっ」
先程弄った右側を、長谷部は躊躇いもなく口に含んだ。味は特に感じられない。軽く歯で噛めば、先日に貰ったぐみ、なる菓子程の固さで面白い。噛みちぎったらもう生えて来ないだろうか、と半ば馬鹿な事を考えながら吸うと、戸惑いの混じったの声が急速に艶めいた。指先で慰めている左側を思い切り捻ると、悲鳴にも似た喘ぎ声が漏れる。この部屋が特別に防音処理されていなければ、恐らく皆に聞こえていただろう。いずれ皆聞くのだが、と長谷部はちゅうちゅうと赤子のように吸って楽しんだ。もし、と思う。ここから母親のように母乳が出ればもっと楽しめるのではないだろうか。神だから出来ない事ではない。アメノウズメにその内願おう、と強めに吸いあげると、一際大きくの身体が震え、ついで弛緩した。
「?」
「やだ、こんなの信じられない……なんで、」
すわ何事かと名残惜しくも胸から顔を上げると、が半泣きになっていた。足を閉じたいのか、間に挟まった長谷部を両脚でぎゅうと閉めて来る。おかしい、おかしいと混乱するの頭を撫でると、長谷部は改めて彼の身体を検分しーー下衣が濡れている事に気がついた。中心部に触れればぐちゅりと湿り気を帯びた音が立つ。どうやらまだこちらを弄っていないというのに達してしまったらしい。
「大丈夫ですよ、その……俺に感じてもらえた、という事ですから」
「どうしよう」
ああ、と両手で顔を覆うと、は流れた涙を拭った。何か自分は不味い事を言ってしまったのだろうか。初夜にして泣かせてしまうとは、折角一番目になったというのに夫失格である。どうしたら機嫌を直せるだろう、と悶々と考え始めた長谷部は、の次の台詞で全てを吹っ飛ばした。
「これ以上やったらおかしくなっちゃう」
「なりましょう」
寧ろさせます、と長谷部は高らかに宣言した。
試験管で生まれ、政府に作られた学校で学び、労働し、ただ国の一労働力として生きるべくして生きていたは、元々生殖活動全般について疎かった。何故ならば、家庭を持ち労働力を増やす事は、に期待された働きではなかったからである。ただ、なんとなくその頃から男性に対してより強い好意は持っていたのは確かだ。そして、いよいよ一人前の労働力として地域の繁栄に活躍しよう、という時になって師匠が現れて大規模な人生の路線変更がなされたのである。
師匠の下で、他の弟子達と共に修行した際になって、漸くは様々な男女の事等をつぶさに学ぶ事になった。弟子仲間では、結婚する者も居れば商売の女性と遊ぶ者も居り様々で、何れにせよ男女の仲に身を以てして精通していた。そういえば同性愛者は居なかった、とは思う。が自身の性癖に気付いた頃には、皆知っていた、と笑っていたが、特段差別はされなかったので良い仲間だった。一人前の審神者として、氏神にアメノウズメがつき、日々役務をこなすものの、これという色事はないまま来てしまっている。
だが、勿論は生き物であり、生殖活動は可能だ。煩悩もある。だから、一応自慰はした事がある。ただ、余り上手く想像できないために盛り上がりきれず、特段楽しいようには思えていない。寧ろ終わった後に脱力感と空しさを覚えていた。
『あんたはすぐ心配するんだから。大丈夫だよ、ちゃんとお互いに満足できるって、私が保証してあげる』
ふざけた初夜を迎える前に、と”母親”役のアメノウズメは今夜の振る舞いについて教えてくれた。一部は保健体育の教育レベルのものだったが、少々きわどいところも教えられ、はこれからこれが自分の身に降り掛かるかと考えて頭が破裂しそうだった。自分が?まさか。どう想像しても、相手のーー今回はへし切長谷部だーー萎える姿しか想像出来ない。幾ら彼らが神で少々ずれた美的センスを持っているとはいえ、流石に自分では、とも思う。
『……あんたが望むなら、性別や見た目も変える事も出来るんだよ。どうしたい?』
「そこまではしたくないわ。多分、後で辛いもの」
そうまでして人の気を引きたいと思うのならば、疾うに整形の類いをしている。一応、これでも歪んだ自己愛として、出来ればそのままの自分を愛して欲しい、等とは願っているのだ。の返事にアメノウズメはうんうん、と感慨深気に頷いた。
『流石は私の氏子だよ。真っ当な心根で良かったね。そんな安い子だったらお仕置きしてたよ。……ま、でも少しはやりやすいように、ちょっとだけあんたの身体を変えてあげるよ。見た目じゃないから安心しな。ちょっと楽しみやすくするだけだから』
「そ、それってどういう、」
『さっき見せた動画よりは痛くないし、最初っから気持ち良いって思えるようにしてあげるよ。そうすれば、遊び慣れてない旦那達でもま、問題なくやれるさ』
できれば遊び慣れている者を娶らせたかった、と嘆息する女神に、は嫌な汗をどっとかいた。どんな風に自分の身体が作り替えられるのかはよく解らないままに術をかけられ、そして今に至る。
「大丈夫だ、とは伺っていましたが……本当に柔らかい」
「恥ずかしいから言わないで、ってお願いしたじゃない!なんで一々言うのよ、ぉ、ぁ、あ、握っちゃいやぁ」
「そう仰るなら、明朝ご報告する形でも宜しいでしょうか」
「よく、ないっ!」
我ながら馬鹿げたやり取りをしている、とは天井を見上げた。こんな風に乱れた状態で天井を見上げるようになる等とは一度も考えていなかった。精悍な顔つきの長谷部が、汗を浮かべて自分の身体を撫で、摩り、舐め、食み、吸って、楽しんでいる。長谷部自身が楽しんでいる事は、先程脱がせた長谷部の見事な裸体を見れば手に取るように解った。身を捩った事で、体内に突き入れられた長谷部の指先が抉るようになってしまって辛い。ここに入れさせてください、と丁寧に頭を下げられて以降、長谷部は新しい玩具でも楽しむように内部の感触を楽しんでいた。少しでも憎まれ口を叩くと、その手前にある自身を虐められるので、どうにも逃げ場は無い。
おまけに、長谷部は逐次自分に報告して来るのだ。ここが良いのですね、色合いがとても綺麗です、塩の味がします、等等、数え上げればきりがない。ぬちゃぬちゃとした、体内でローションが立てる音も卑猥で、は明日は平然と過ごせそうにないな、と今から嫌になってしまった。これで気持ち良いのだから手に負えない。どうやらの女神は、随分と淫らに自分の身体を順応させたらしかった。
腹立たしい事に、長谷部はの反応を見て解っているくせに、一丁前にも焦らして来ていた。どうやら何か言わせたいらしい。前立腺らしき箇所の周囲を弄るばかりで、肝心のそこには触れて来ないし、出来上がっている自身を入れて来ようともしない。何かの見過ぎだ、とは頭を抱えた。多分、陸奥守を筆頭にこの手の知識を賢明に詰め込んだ彼らは、インターネットの手を借りて、よりも余程詳しいに違いない。最初なのにな、とはゆっくりと上半身を起こした。体内で指の形が変わって妙な声が出たが、ぐっと堪えて驚く長谷部の胸板に頬を擦り寄せる。
「何をなさいます、っ」
「はせべくん」
「は、はいっ!」
「長谷部君はいつ、私をお嫁さんにしてくれるの?」
するり、と指先を胸板から下へと降ろし、長谷部の猛った怒張を軽くなぞる。それだけで大きくひくついた様子からして、長谷部も相当に限界であるらしい。返事の無い長谷部の太ももを、わざといやらしく撫で回していると、急に押し倒された。
「……どこで覚えたのか教えてください」
「今」
「、」
「だってしてほしいんだもの。仕方ないでしょ?」
ああもう、と長谷部が叫んで抱きしめてくる。痛い程に強く強く力が込められていた。自分では余り良い顔ではないと解りながらも、は上目遣いでじっと長谷部を見つめてみる。この世の存在としてはよりも余程上で、俗世に全く慣れていない清らかなものが完全に翻弄されていた。なるほど、こういう楽しみ方もあるのだな、とは長谷部が自分を弄る気持ちがなんとなく解って快哉をあげた。今後の役に立ちそうだ。
「で、ではこのすきん、を使って、」
「はせべくん、はやく」
「ですがっ、物の本にはこれをせねば腹を壊すと……!」
「大丈夫」
アメノウズメがぬかりなくそこは身体を変えたのだ、とは確信していた。勿論異物だろうから、中に出されたものは取り除く必要があるだろうけれども、腹痛等という興ざめな出来事は起きないに違いない。全く以て御都合主義な身体になってしまったのだった。
「いれて?」
「しゅ、主命であれば!このへし切長谷部、参ります!」
「ん、」
威勢のいい台詞に、はその初心さを見て取って微笑んだ。本当に可愛らしい旦那様なのだ。他の皆もそれぞれ違って楽しめそうである。これまで一度も考えた事は無かったが、今後の生活は、それはそれで悪くはなさそうだ。深呼吸の後に、長谷部が慎重に、慎重にの中へと押し進んでゆく。流石に初めて受け入れる異物は存在感が大きく、は思わずうめいた。刀剣をものに例える事があるが、まさか、と思わせる質量である。しかも内部に入ってから更に成長したようで、は神様になってからで良かった、と心の底から安堵した。人の身で受け入れたならば、満身創痍になってしまうに違いない。
浅い箇所で、慣らすように抜き差しされ、ああ、入って来る入って来る、とぞくぞくしながら受け入れてゆく。ここで終わりかな、と思った所で更に深く入ってゆくので、目にしていたあれが入るとここまで長いのか、とはくらくらしてしまった。確かめるように内奥を締めれば、確りとした形がありありと感じ取られた。
「くっ、そ、そんなに締めないでくださ、いっ」
「こんな風に?」
「だから、ぁ、あ、ああっ」
「ひゃ、あ、なに、」
きゅうきゅうと締め上げた瞬間、どっと体内で何かが弾けた。何か、とは勿論長谷部のものに決まっているのだが、余りにも突然すぎて咄嗟に理解出来なかったのである。暖かなものがじわじわと体内に広がり、は生理的嫌悪感で震えた。長谷部が達してしまったのだ。それも、まだ動く前に、である。初めてであるものだから、にはよく解らなかったが、恐らくは早い、と称される部類なのではないだろうか。案の定、長谷部はと言えば、可哀想な程に落ち込んで俯いてしまっていた。
「長谷部君、大丈夫?」
「……ひどいです」
「は、長谷部君」
「締めないで欲しいと、申し上げたではありませんか!どうしてこんな、こんな……ぁっ」
「ごめんなさいね、長谷部君」
でも嬉しい、と再度腹に力を込めると、段々と長谷部が硬度を取り戻してゆくのが感じられる。何故だか応援するような心地になって、微笑ましさすら感じられた。自身の方は、と言えば、この事態に少しも動じていない。
「許してくれる?」
「……本当に、貴方はどこでそういう事を学んで来たのですか」
「今一生懸命考えただけよ」
してほしいから、と訴えると、長谷部が諦めたように首を振った。何れにしたって、もうお互い目的が合致しているのだから為すべき事は決まっている。長谷部が強引にの太ももを抱え上げ、ずるりと中から引き抜きーー容赦なく叩き付けた。嬌声を上げて身体をのけぞらせると、は楽しいな、とふわふわとした思考で愛しい夫を見遣った。これからはずっと皆一緒なのだ。しかも、こんなにも楽しく愛されるとは何と言う幸運だろう?人生とは本当に想像もできない方向へと向かうものであるらしい。親友の唐梨勇夫にはなんと報告しようか、と考えては首を振った。恐らくは夫達が揃って彼に報告に行くだろう。何せ、刀剣男士にこの手の知識を吹き込んだ諸悪の根源は勇夫なのだ。
よく夫婦の交合は神聖なものとして捉えられがちだが、は違うと嘆じた。神聖な生き物だった長谷部は、今どうしようもなく煩悩に溢れている。もっと俗で、生臭い、楽しい遊びだ。そうでなければ何故年中可能なのだろう?がくがくと腰を震わせながら、は長谷部が喉元に噛み付くのを許した。
神ではなく、一人の男として振る舞う夫は、どうにも可愛くてならなかった。
〆.
あとがき>>
リクエスト投票で一位となった長谷部夢です。オネエ審神者のお初は長谷部によって奪われました……!でも長谷部にしろ誰にしろ、突っ走る事は出来るけど、途中で「あれ?これこっからどうすれば良いんだっけ???」って混乱していそうなイメージがあります。最初は強引に優位に立ち、対等になったな、というところで最後の最後でDOTEIっぽい感じでまとまりました。HENTAI長谷部のままで終わらなくて良かった。
投票してくださった皆様、ありがとうございました〜!
また、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!