DREAM NOVEL
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黙っていた方がいいのだ


もし言葉が


 腰が痛い。じくじくとした痛みがさながら魔女の一撃の如く鋭いものに変わったことを認識した瞬間、は恥も外聞も声も無くその場に崩折れた。突然道ばたで崩れた中年男性の姿に、周囲を歩く人間が不審気に振り返るが、すぐさま無関心を装って流れ始める。現代はかくも無情と非情の時代なのだ、とは先日見たテレビ番組の台詞を思い出していた。夕暮れ時の帰宅ラッシュのため、朝程急いては居ない人々が通り過ぎて行く。皆自分の生活に精一杯なのだろう。

 立ち上がろうとするも、狙い棲ましたかの様に激痛が襲う。再び地に膝をつけながら、はこのところ連日晴れ模様で良かったと関係のないことを思った。何度も地面に打ち付けられるのは好きではないが、それでいたって泥水をかぶるよりはましだろう。なんとか痛みが引くのを祈ると、はうなり声とともに起き上がった。起き上がって一等に心に書き付けたのは、薬屋で湿布を買い込むという一事だった。

「思い出したみたいに痛くなるくらいなら、ずっと忘れていりゃあ良いのにな」

が腰を痛めたのは年齢故ではなく、かといって伊織や真田やらが喜んで後ろから抱きついてくるためでもなく、単純に古傷が痛むという理由からであった。高校に入って少し、新しい環境にもようよう慣れたという頃に起こった交通事故のため、は全身不随となり、最終的にリハビリによって健常者と同様になったものの、とりわけ傷が深かった腰に後遺症を残していた。常時痛い訳ではない。故に本人も存在を忘れてしまうのだが、時折存在を主張する様にしてこうして痛むのだった。

「忘れたいことばかりだな」
「ええ、実にその通りですね」
「っ」

唐突に響いた声に振り向くと、近頃はやりのオカルト趣味とでも言うのだろうか、世紀末の救世主の様な出で立ちをした男が濁った瞳をこちらに向けていた。先ほどの台詞はこの奇妙な青年が発したのに間違いは無いらしい。評判のオヤジ狩りか、はたまた宗教勧誘だろうかと身構えながらも、は怪訝な表情を浮かべた。

「自己紹介が遅れました。私はタカヤと申します。以後御見知り置きを」
「ご丁寧にどうも。俺はあんたに用はない。勧誘だったらお断りだ」
「勧誘。言い得て妙ですね」

台詞を舌で転がす様に言うと、タカヤがずいと近づく。どういうわけだかこんな時ですら人々は完全に他人に大して無関心だった。ひょっとするとここで人殺しが起きたとしても気に留めないかもしれない。恐ろしい思いには心臓に冷や汗を浮かべると、目の前のタカヤに向き直った。一見すればひどく線が細く、抜ける様にして色の白い、何か薬物の中毒症状でも抱えているかの様である。ふらふらと漂う様な動きは無気力症候群の人間にも通じていた。

 タカヤ、という名に微妙な引っかかりを覚えるも、ははっきりと思い出せずに居た。先月の頭に誰かが何か言っていた様にも思うが、矢張り思い出せない。ひょっとすると、自分が参加できなかった大型シャドウ戦と関係があるかもしれない。ならばますます不気味な事で、は眉を顰めた。

 だが、それよりも何か危険性を感じるのは見た目の様な表面的な部分ではなく、タカヤの本質からにじみ出る何かであった。はっきりとしないことが余計に気持ち悪さを増す。きびすを返して家路につこうとすると、ぐいと腕を引っ張られた。

「名乗りもせずに去るのは非常識ではありませんか、さん。わざわざ貴方に会うために私は来たんですよ」
「剣呑だな。知ってるならなおさら良いだろう。生憎俺は具合が悪いんでね、さっさと帰りたいんだ」

自分の名が知られていることには大して驚きもしなかった。多少調べれば直ぐに解ることであるし、これまで不気味ではあるものの、名指しで見知らぬ人間が自分を呼び止めるということが幾度かあった。大概は興信所で、次はやくざであるとかいずれにせよ滅多に通常声をかけられる相手ではない。面倒ごとには違いなく、要するに問題は何故調べたのか、ということだった。ますます渋面を深くするに、タカヤは更に腕を引っ張りの耳元に唇を寄せた。

「ペルソナ使いは惹かれ合う」

ざくりと鋭いナイフを突き刺す様にタカヤの声が耳を抉る。だがの表情は少しも変わりなく、ただ不機嫌そうなままであった。むしろ変化したのはタカヤの方で、が驚きもしないことに興味を覚えたらしかった。

「驚かないんですね。ご存知でしたか」
「ある意味な」

ペルソナ使いが町に溢れているかもしれないということを、は以前から可能性として考えていた。何しろシャドウがあれほどわいて出るのだ_____その逆もまた、十分ありうるというものだろう。自分やコロマルの様に自分自身がペルソナ使いであることを自覚せずに生きてきたものも多い。むしろ、自覚した所でそれをいちいち誰かに知らせることの方が珍しく、そのために存在が確認されていないということに過ぎないだろうとは推測していた。誰が理解するというのだろう。ただでさえ人の心の奥底の深淵など知ることは難しいのだ。だが、単純な推測の積み合わせに過ぎないの表情に、タカヤはますます嬉しそうに何度か頷くと、自分は混沌と絶望を愛しているのだ、と話を飛躍させた。

「忘れたいことばかりだと貴方も仰っていたでしょう。この世はかくも残酷だ」
「はあ」
「貴方は憎くありませんか、貴方をそんな風に作り替えた世界が」

そんな風に、とタカヤはまっすぐにの掌を指差した。陽炎の様にの掌が揺れる。透けているのだ、とは舌打ちしたい気持ちで一瞬見やり、首を振った。は運命主義者ではない。波に逆らわぬかの様なのらりくらりとした生き方を続けているが、人は自らの足で以て立ち生きているというのが確かな事実であると感じていた。その足すら折れているのだろうか。が測る様にタカヤを見ると、焦る様に青年は両手を広げた。

「未来も何も無いこの世界に何を求めるというのです。ただ生きて腐って死ぬだけの世界に意味等無いとは思いませんか」
「生憎俺はもとから腐ってるんでね」
「だからこそ、理解できると私は思っていますよ」
「そうか」

ほんの少し唇を歪めるとは小さく安堵した。つまり、このしたり顔の青年はの根源的なことを何一つ知らないのである。ならば遠慮はいらなかった。ちらと周囲に目を配ると、は透けたままの指先を躊躇いもせずタカヤの額にめり込ませた。一瞬の出来事が理解できず、タカヤの瞳が惚けた様に開かれ、額に向かう。完全に状況判断しきるよりも前に、は指先をうごめかせた。

「腐って生きるだけでも俺には十分幸せだ」
「何をす……ぁぁあああああああっ!」
「タカヤ!」

転がり込む様にして駆け込んできたのは眼鏡の少年で、矢張り通行人は何も気づいていないようだった。要するに、単純に人々が無関心なのではなく、ペルソナの力が働いているということなのだろう。はにやりと笑うと白目を剥きかけたタカヤから指先を引き抜いた。不思議なことに引き抜いた指先は全く透き通っておらず、喘ぐタカヤが混乱した様な目を向けるのがおかしかった。

「他にも居るだろうなと思ったが、三人くらいか。おい少年」
「なんや、オッサン。ちょっとタカヤが気ぃ許したかて調子に乗んなや」
「そいつはどうも。それよりもその大事なタカヤを休ませてやった方が良いぜ」

すぐさま突っかかろうとする少年を留めると、は自分でも最高だと思える程に人の悪い笑みを浮かべた。元より善人ではないが、気分は既に悪人だった。暫しの睨み合いの後、覚えておけ、という実に使い古された捨て台詞を残して少年と青年が去って行く。同時に雑踏の音が驚く程にクリアになり、は耳を塞いだ。タカヤの仲間のペルソナの能力でだろう、隔離されていた世界がやけに静かだったせいか、耳が痛い。顔をしかめるとはゆっくりと手を離して歩き始めた。矢張りこの奇矯な行動を道行く人間が目に留めることは無い。現代は無情で非情だった。

 通常、ペルソナ使いはペルソナを召還器を使用して発動させる。銃の様な形をした召還器を自身に向けて発動する姿はさながら自殺の様にも見えるが、実際にはペルソナ使いにとって最も負担の少ない発動方法だと言う。つまり、召還器は必ずしも必要な道具ではないのだ。ペルソナは精神の発露であるため、術者の精神状態の抑制が利かない場合、まま暴走する。同様に、精神力が強い人間は召還器なしでもやすやすと能力を扱ってみせるという。

 はそのどちらでもないが、意図的にペルソナを呼び出す程度のことは易々とこなしていた。例えば先程はタカヤの精神を直接攻撃したのだが____それはペルソナによるものである。だが矢張り経験も浅いにとって、召還器なしでのペルソナの発動は負担にしかならなかった。額に浮いた汗が顎を伝って流れる。腰の痛みはいや増し、は機械的に足を前へ前へと踏み出すものの、既に他に何も考えられずに居た。

 ポケットを何かが滑る感触にズボンを探ると、薄いグレーの携帯が震えていた。見れば、発信者は伊織だった。いつまでも震えることをやめない携帯に舌打ちすると、は建物の壁に寄りかかって携帯を開いた。

「……もしもし」
サン、大丈夫っスか?』
「どうしたんだ、急に」

余りにもタイミングの良い発言に、は周囲に居るのだろうかと思わず頭を巡らせた。目のつく範囲に伊織らしい人物は見当たらない。ほっと気を抜いて返事を待つと、戸惑う様にして伊織の苦笑が漏れた。

『そうっスか、なら良いっス。すんません。実は、和也サンがこっちに来てたんスけど、急に倒れたんスよ』
「和也が?」
『今は安静にしてるんで大丈夫みたいなんスけど……その、和也サンがどうしてもサンに確認してほしいって……あ、今代わりますって!ちょっと待っててくださいってば、』
、私だ』
「ああ」

低く唸るとはありそうなことだと額に手を当てた。自分の具合が悪くなれば広原の具合もまた悪くなる、等考えなくてもありうることだった。

『今度は何をしたんだい。今日は腰痛だけだと思っていたんだがね』
「ペルソナを召還器なしで喚んだ」
『なるほどな』

そっくりに低く唸ると、広原はさっさと帰ってくる様に、とだけ告げて打ち切った。理由は何も尋ねないというのが、実に広原らしく、は苦笑すると大通りに続く道を選んだ。こんな時はタクシーが一番だった。




 突然倒れた広原を前に、伊織は頭を抱えていた。何しろ大人一人が目の前で倒れたのである。医者を志望しているという噂の山岸が思いのほか冷静で無ければ自分は彼をソファに運ぶことすら出来ず、おろおろとしているままだっただろう。気を失っているかの様に思えた広原が目を開けるまでには多分、五分程度はかかったかのだろうが、伊織にはもう一時間もそうしていたように思えた。

は何処に居る」
「え、さん、ですか?さんなら確か、駅前に買い物に行っている頃だと思いますけれど」

ばちりと瞳を開いた広原が開口一等尋ねたのは、なぜか自分の従兄弟であるのことだった。山岸の返答に有り難う、と礼儀正しく呟くと、驚く二人を尻目に広原は連絡を取ってほしい、と今度は伊織に頼んだ。何か重大な持病でもあるのだろうか、それ故事情を知っていると話したいのだろうと伊織は勝手な想像を膨らませたが、広原はまるでそんな伊織の心を読む様にして微かに首を振った。

が無事かどうか、確認してほしいんだ。頼む」
「それってどういう……あー、もう解りましたよ。すぐ連絡しますって。えーと、サンサンっと」

とは先日共に待ち合わせをして買い物に出かけたばかりだったので、発信履歴をたどれば直ぐにかけることが出来る。急かす広原の目が痛い程に突き刺さるのを感じながらも、矢張り伊織は首を傾げずにはいられなかった。数コールの後、すぐでもなく遅くもないらしいタイミングで無愛想な声が受話口から流れ出る。

『……もしもし』
サン、大丈夫っスか?」
『どうしたんだ、急に』

訝しげな響きに、伊織はもっともだと心中溜め息をついた。あるいは真田ならばしれっとそこはそれ、第六感というものだと応えるのかもしれないが、伊織は立場が異なる。が静かに待つ気配に少し安堵すると、伊織はまだ駅前に居るのだろうと流れる雑踏の音から判断した。

「そうっスか、なら良いっス。すんません。実は、和也サンがこっちに来てたんスけど、急に倒れたんスよ」
『和也が?』

思いの外声に驚きが含まれていないのは、元々の感情の起伏が実に緩やかであるためだろう。過ごしてきた時間が長くなるにつれ、その僅かな感情の起伏が解る様になってきた伊織だが、流石に電話口だけでは判断しきれなかった。他の事へと思いを巡らせていると、不意に後ろから強く引かれる。振り向けば、広原が代わってほしいというように手を差し出していた。要求の多い大人だ。溜め息をつくと伊織は直ぐに代わると手振りで示し、会話に戻った。

「今は安静にしてるんで大丈夫みたいなんスけど……その、和也サンがどうしてもサンに確認してほしいって……あ、今代わりますって!ちょっと待っててくださいってば、」
、私だ」

静止の声を振り切り、広原は無理矢理奪い取る様にして携帯を取った。そんなにも元気が有り余っているのならば自分でかければ良かっただろう。頬を膨らませて山岸を見れば、小さく笑って肩をすくめられた。彼女もこのやり取りが奇妙に感じられているらしかった。未成年二人の静かな会話を他所に、広原は一体何の会話をしているのか訳の分からない台詞を告げていた。

「今度は何をしたんだい。今日は腰痛だけだと思っていたんだがね…………なるほどな。早く帰ってくると良い」

何度か最もらしく頷くと、あっさりと広原は会話を打ち切り、今度は丁重な仕草で伊織に返した。拍子抜けする程にすぐさま終わってしまった会話に狐につままれた様子で伊織と山岸が広原を見ると、広原はいくらか体調が良くなったらしい様子でソファに座り直した。

「御騒がせして申し訳ない」
「いえ、それよりも具合は大丈夫ですか?」
「御蔭様でね。心配してくれて有り難う」

にこりと紳士的な笑みを広原が浮かべると、山岸の頬が僅かに紅くなる。なるほどこうした丁寧な人間が好みなのだな、と納得する様な思いで見ていると、広原は伊織にばちりと一つウインクをして寄越した。

「君も有り難う。お陰で助かったよ」
「べ、別に、たいした事じゃ無いっス。それより、サンは何か言ってたんスか?」

どういうわけだか広原に見詰められ落ち着かないものを覚えて、伊織はずいと視線と同時に話を反らした。ああ、とほんの少しだけ驚いた様に唇を開けるとすぐさま広原の表情が普段の紳士的なものに移る。どうやら話を反らせていたのは向こうの方だったらしかった。

「……私とは幼い頃から共に育ってきた。それこそ、双子の様にね。山岸君はこんな話を聞いた事があるかい、」

態とらしく間を空けると、広原は誰かの病気や怪我に同調する現象について聞いた事は無いか、と尋ねた。山岸が頷く。伊織も、先日観たテレビ番組で双子が同じ病気に_____それも離れた場所であったにも関わらず、同時にかかったという話が放送されていたばあkりなので頷いた。

「私とは丁度その双子の様なものなんだ。どれだけ離れていてもね、迷惑な事に一方が病気になればこちらも病気になるのだよ。不思議だろう」
「でも、さっきサンは大丈夫だって言ってましたけど」
「それは嘘だよ。もうすぐ帰ってくるから尋ねてみると良い。最も、私に会えば多少は良くなるだろうが」
「何故ですか?会うだけで治るだなんて、それこそ信じられません。聞いた事もありませんし、」

おずおずとした山岸の反論はだがしかし確りとしたものだった。途端、広原の表情が蕩けそうな笑みに変わる。

「言い直そう。少なくとも私の具合は良くなるんだ_____の無事な姿を見ればね」
「ただいま」

広原が言い終わるのとほとんど同時に寮の扉が開き、が姿を現した。去って行く光からするに、どうやら駅前からタクシーで帰ってきたらしい。足取りはどこかおぼつかなく、正直な所先程の広原よりも余程具合が悪そうだった。広原の言う通り、は嘘をついたのだろう。確認を求める様に広原を見れば、解っただろうというように唇の片端を上げられた。

「お帰り、




 広原とは双子の様だ、という。ぱっと見ただけでは判別できないが、一つ一つの部位がよく似通っているのだ。その上仕草も似ているとなれば人は誰しも二卵性双生児ではないかと思うだろう。あるいは兄弟か。その実態が母方の従兄弟であるということは実に納得できる理由だったが、山岸は矢張り疑問を抱いていた。奇妙だ。広原が帰り、それそれ何とはなしに自室に戻った後、山岸は一人ノートパソコンと睨み合っていた。

「でも、そんなことを言っていたら、皆のこと、何も知らないんだよね……難しいなあ」

伊織が密かに推量した様に、山岸は仄かな恋情にも似たものを広原に抱いていた。紳士的な態度や仕草、物言いもそうだが、何よりも時折見せる茶目っ気が、彼の人の素に触れる様で好ましく感じられていた。同様にそれはにも言える事で、山岸はが思っている程彼の事を近寄りがたい様には感じていない。何かきっかけがあれば、もっと色々話してみたいとすら考えていた。

 その、と広原である。確かに広原が言った通り、どういうわけか広原の横に座ったは幾ばくか症状が和らいでいるようだった。双子の病気や怪我等の体調の同調の話は聞いた事があるが、そばに居るだけで具合が改善するという話等聞いた事は無い。あるならば互いに共通した精神的な何かが原因の不調とも考えられたが、何しろと広原はつい数ヶ月前に再会するまで長く別れ別れになっていたのだ。あり得る筈も無かった。

 と広原の不思議な事と言えば、ペルソナも不思議であった。と広原のペルソナはそれぞれペルセポネーとコレーという。どちらも女性であり、そして一見すると色が違うだけの同じものにしか見えないものであった。ペルセポネーとコレーは同一の女神の異称であるという。名付けた幾月が二人のペルソナの相似を意識していたのは間違いなかった。

 おまけに二人は唯一ペルソナによる協力攻撃を行う事が出来るのだった。幾月が言うには、余程術者の精神が同調していなければ出来ないことだという。それも、同一人物であるかの様に同調していなければ不可能である、と。

「山岸、少し良いか」
「あ、はい!どうぞ、桐条先輩」

コンコン、というノックの音に現実に戻ると、桐条が相変わらず慣れない様子で部屋に入る。席を勧めると、桐条は先日の事だが、と矢張りいつもの様に用件を切り出した。

「父にさんと小父様の話を尋ねた。直接教える事は出来ないが、調べてみれば分かる、とのことだ」
「……それって、つまり先輩の予想が当たっているってことですよね」
「多分、そうだろう」

深く溜め息をつく桐条に、山岸はなるほどそうかとすとんと納得していた。実は山岸がと広原の二人に疑問を抱いたのは今が初めてではない。そしてそれは桐条も同様であり、幼少期から慣れ親しんだ広原に従兄弟が居る事すら知らなかった事実を始めとして二人の存在に奇妙さを感じていた。ただの従兄弟ではないのか、という娘の問いに対する父親の答えが調べてみれば分かる、というものだとするならば、それは概ね予測が当たっているという事だろう。

 他人を詮索する事は必ずしも良い事ではない。だが山岸は単なる知的好奇心ではなく調べなくては行けない様な使命感が芽生えるものを覚えていた。

 広原和也、とは何者か。

 ありえないことではない、と山岸は密かに心に暖めた答えに頷いた。だがそれはまだ口に出せるものではない。言葉とは常に誤りがちなものなのだ。

「調べてくれるか」
「はい」

例え言葉以上に行動が誤るものだとしても。

〆.

後書き>>
 たまには真田先輩の出ないものを書こう、と思って今までスポットを当てないで居た風花に当てました。ついで、何となく話を進めるという。特に書かないので分かり難いかもしれませんが、9月の頭程度を書いています。しばらく書かないでいるとゲーム中の時間の流れが分からなくなってくるという。。。。

最後まで読んでくださり、有り難うございました!